一人親方の労災保険への特別加入
一人親方の労災保険への特別加入
【一人親方の特別加入制度について】
通常、一人親方等は労災保険の対象にはなっていませんが、その業務の実態等により労働者に準じて、
その業務災害に関して補償をするにふさわしい方がいます。
そこで、労災保険制度本来の建前を損なわない範囲で利用を認めようというのが特別加入制度です。
特に一人親方等は、企業としての保険成立がないので加入するところがありません。
そのため、国の承認を受けた中小企業福祉事業団の建設事業一人親方組合又は
運輸事業一人親方組合を通して適用事業主、組合に加入した一人親方等を労働者とみなして
労災保険の特別加入ができることになります。
幣事務所は、「中小企業福祉事業団」の幹事社労士となっており、
一人親方等の労災保険への特別加入にも対応しております。
【一人親方等についての定義】
一人親方等とは、労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする一人親方
その他の自営業者及びその事業に従事する家族従事者をいいます。
労働者を使用する日の合計が年間100日以上と見込まれる場合には中小事業主等となりますのでご注意下さい。
【加入できる職種】
(イ) 建設の事業(土木、建築、その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、
破壊もしくは解体又はその準備の事業)を行う方
(例)大工、とび、左官、防水工、板金工、電工、配管工、土工、建具工、家具工など
(ロ) 自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業を行う方
(例)個人タクシー業者、個人貨物運送業者など
(注)加入にあたり健康診断が必要な場合もあります。
【加入できる地域】
加入できる地域は、
東京都、神奈川県、干葉県、埼玉県、山梨県、群馬県、栃木県、茨城県、静岡県
に居所を有する方に限られます。
【一人親方組合に加入する手続き】
一人親方等として加入要件を満たす方が、建設事業一人親方組合又は運輸事業一人親方組合に
加入して特別加入を申し込むには、当組合所定の「特別加入申込書」に希望する加入日額などの
必要事項を記入の上、労災保険の特別加入開始希望日より一週間前迄に提出することが必要です。
【加入日額について】
加入日額とは、労災保険の給付額を算定する基礎となるものです。
特別加入を申し込む時は、一人親方等の所得水準に見合った適正な額を当組合所定申込書の
「加入日額」欄に記入して申請することになります。
申請に基づいて都道府県労働局長が承認した額が給付基礎日額となります。
なお、決定された給付基礎日額は、毎年継続加入の申し込み時に変更の申請をすることができます。
その場合には申込書の「日額変更の希望」欄に記入することになります。
特別加入保険料算定基礎額表
給付基礎日額 | 保険料算定基礎額(年間) |
---|---|
20,000 | 7,300,000 |
18,000 | 6,750,000 |
16,000 | 5,840,000 |
14,000 | 5,110,000 |
12,000 | 4,380,000 |
10,000 | 3,650,000 |
9,000 | 3,285,000 |
8,000 | 2,920,000 |
7,000 | 2,555,000 |
6,000 | 2,190,000 |
5,000 | 1,825,000 |
4,000 | 1,460,000 |
3,500 | 1,277,500 |
【保険料について】
特別加入者の保険料については、保険料算定基礎額(給付基礎日額に365を乗じたもの)に
それぞれの事業に定められた保険料率
※(建設事業18/1000、運輸事業12/1000)を乗じたものとなります。
なお、年度の途中において、新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、
当該年度内の特別加入月数(1ヶ月未満の端数があるときは、これを1ヶ月とします。)に応じた
保険料算定基礎額により保険料を算出することとなります。
【組合会費について】
入会費 | 0円 |
組合費(年額) | 3,000円(税込) |
【保険料及び組合費の納入方法】
特別加入の申し込みをいただいた日から2週間以内に、申込書記載の所属会社宛てに、
納入通知書(個票)及び振込用紙を発行いたします。
また、継続加入の場合は、4月中旬の発行となります。指定された期日までに銀行窓口にて納入して下さい。
※ 保険料・組合費ともに年度途中の加入の場合は月割計算の対象となります。
※ 保険料等の納入は当該年度分を一括して納入してください。
【保険期間及び加入証】
保険期間は、申込書記載の保険開始日より当該年度末(3月31日)までとなります。
保険料等納入後、「一人親方労災保険加入証」(個票)を発行いたします。
本証は、保険料等の領収と組合員としての資格を証明し、給付請求その他必要な時に
提示していただきますので、大切に保管して下さい。
また、一人親方組合を脱退するときはすみやかに返納して下さい。
元請会社への提示(証明)などにもご活用できます!!
【継続加入の手続き】
継続して加入するときは、継続申込書(3月配付)に記名押印の上、
指定期日までに提出していただくことで引き続き特別加入することができます。
【健康診断が必要な場合の手続き】
特別加入を希望する一人親方等のうち、下記に記載されている「特別加入予定者の業務の種類」欄に応じて、
それぞれの従事期間を超えて当該業務を行ったことがある場合には、
特別加入の申請を行う際に健康診断を受ける必要があります。
(下記以外の方は必要ありません。)
健康診断が必要な業務の種類
特別加入予定者の 業務の種類 | 特別加入前に左記の業務に 従事した期間(通算期間) | 実施すべき健康診断 |
---|---|---|
粉じん作業を行う業務 | 3年 | じん肺健康診断 |
振動工具使用の業務 | 1年 | 振動障害健康診断 |
鉛業務 | 6ヶ月 | 鉛中毒健康診断 |
有機溶剤業務 | 6ヶ月 | 有機溶剤中毒健康診断 |
申込書記載の業務歴から判断して健康診断が必要であると認められる方
(以下「加入時健診対象者」といいます。)には、あらかじめ当組合所定の「健康診断調査表」を
記入していただくことになります。
加入時健診対象者に対しては、当組合経由により労働基準監督署長から「特別加入健康診断指示書」が
交付されますので、指示書に記載された期日に指示された診断実施機関で
健康診断を受けていただく必要があります。
なお、この場合の健康診断に要する費用は無料です。ただし、受診のために要した交通費は自己負担となります。
(注)健康診断を受診しなかったり、あるいは、業務の内容、業務歴等について虚偽の申告を行った場合には、
特別加入の申請を行っても承認されなかったり、保険給付が受けられない場合がありますのでご注意ください。
【特別加入が制限される場合】
加入時健康診断を受けた結果、次の場合には特別加入が制限されます。
(イ)特別加入予定者がすでに疾病にかかっており、その症状又は障害の程度が一般的に就業することが
困難であって、療養に専念しなければならないと認められる場合には、
従事する内容にかかわらず特別加入は認められません。
(ロ)特別加入予定者がすでに疾病にかかっており、その症状又は障害の程度が当該業務からの
転換を必要とすると認められる場合には、
当該業務以外の業務についてのみ特別加入が認められることとなります。
【補償の対象となる範囲について - 業務災害】
保険給付の対象となる災害は、加入対象に応じて一定の業務を行っていた場合(業務遂行性を有するもの)に
限られています。したがって、次に該当しない場合には被災しても
保険給付を受けることができませんのでご注意下さい。
また、災害がその業務によって生じたものであるかどうか(業務起因性を有するか否か)の判断は
労働者の場合に準じることとされています。
建設事業の一人親方等
- 請負契約に直接必要な行為を行う場合
- 請負工事現場における作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
- 請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合
- 請負工事に係る機械及び製品を運搬する作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
- 台風や火災など突発事故等による予定外の緊急出勤の途上
個人タクシー業者及び個人貨物運送業者
- 免許等を受けた事業の範囲内において事業用自動車を運転する作業(運転補助作業を含みます)、貨物の積み卸し作業及びこれらに直接附帯する行為を行う場合
- 台風や火災などの突発事故等による予定外の緊急出勤の途上
【補償の対象となる範囲について - 通勤災害】
通勤災害については、一般の労働者の場合と同様に取り扱われます。
ただし、個人タクシー業者及び個人貨物運送業者については、住居と就業の場所との間の往復の
実態が明確ではないこと等から、通勤災害の保護の対象となっていません。
労災保険法上の通勤とは
労災保険法上の通勤とは、就業に関して、住居と就業の場所との間を、
合理的な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものをいいます。
また、通勤の合理的な経路上で逸脱又は中断したときには日用品を購入する等の
日常生活上必要な行為でやむを得ない事由により行うための必要最小限度の場合を除いて、
逸脱・中断の間及びその後は労災保険法上の通勤とはなりません。
【保険給付について】
特別加入者が業務災害または通勤災害により被災した場合には、次のような保険給付が行われるとともに、
これと併せて特別支給金が支給されます。
保険給付・特別支給金一覧表
※クリックでPDFが表示されます。またこの一覧は、分かり易く解説するため、具体的要件につきましては不充分な点もありますので、ご注意ください。
休業(補償)給付については、所得喪失の有無にかかわらず、療養のため補償の対象とされている範囲
(業務遂行性が認められる範囲)の業務又は作業について全部労働不能であることが必要となっています
[全部労働不能とは、入院中又は自宅就床加療中若しくは通院加療中であって、
補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務又は作業ができない状態をいいます]。
【給付請求の手続き】
万が一、業務災害又は通勤災害を被った場合は、幣事務所又は一人親方組合までただちにご連絡下さい。
所定の手続きをいたします。
【支給制限】
特別加入者が業務災害又は通勤災害を被った場合には保険給付が行われますが、その災害が
特別加入者の故意又は重大な過失によって発生した場合及び保険料滞納期間中に生じた場合には、
支給制限が行われることがあります。
―人親方等が特別加入業務に従事しなくなった場合又はやむをえず特別加入を脱退する場合は、
一人親方組合所定の「特別加入脱退申込書」に記入押印の上、
脱退を希望する日までにご提出していただくことになります。
既に払込みいただいた労働保険料等は加入月数に応じて還付の手続きをいたします。
なお、当該年度末をもって特別加入を終了し、翌年度以降の継続加入を希望しない場合は、
継続加入申込書(3月配布)に「脱退」と朱書きのうえ提出していただければ脱退の申込みとみなします。